米国防総省(DOD)の緊急リリース:米国の対ウクライナ安全保障支援に関するファクトシートの内容と

 筆者は、ロシアのウクライナ侵攻に関し軍事面から「フィンランドスウェーデンの軍事同盟NATO 加盟問題と両国のわが国の軍事面の関わり、さらにNATO事務総長来日の真の目的は?を2回((その1)(その2完)にわたりを取り上げた。

  今回のブログは、筆者の手元に届いた国防総省の速報12/7⑧でロシアのウクライナ侵攻に関し最新情報を読んだ。米国のバイデン政権発足以来、ウクライナに448億ドル(約6兆5,785億円)以上の安全保障支援を約束しており、その中には2022年2月24日にロシアによるいわれのない残忍な侵略が始まってからの442億ドル(約6兆4,905億 円)も含まれる。

 ここで、筆者が問題視するのは、その金額ではない。無人ドローン兵器の多様化とそれに伴う対ドローン兵器の開発や駆動手段の小型化、携帯性兵器の強化、戦車に代わる一般車両の改良型ミサイル発射装置等である。

 最近、これらを集約した解説サイト“Anti-drone “gun trucks,” a Patriot Battery, Stinger missiles – Ukraine’s modern air defense”を読んだことも影響して改めてDODのニュースを仮訳するとともに、これらの情報をより詳細に補足、整理した。

1.防空兵器(Air Defense)

パトリオット防空砲台と弾薬 1 基(One Patriot air defense battery and munitions)

② 12 基の国家先進地対空ミサイル・システム (NASAMS) と弾薬(12 National Advanced Surface-to-Air Missile Systems (NASAMS) and munitions)

NASAMS(National/Norwegian Advanced Surface to Air Missile System)は、ノルウェーアメリカが開発した中高度防空ミサイル・システム。AIM-120 AMRAAM空対空ミサイルを地上発射化したシステムとしては初のものであり、分散・ネットワーク化されている。ミサイル本体の名称はSL-AMRAAM(Surfaced Launched AMRAAM)。

NASAMS の発射機(Wikipediaから抜粋)

開発:

 ノルウェーの企業コングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース社がレイセオンと開発チームを編成し、ノルウェー軍と協力して開発が開始された。最先端のネットワーク中心対空防衛システムであるNASAMSは1998年に正式に実戦配備されたが、初期型は早ければ1995年には配備可能だったとされる。

③ HAWK 防空システムと弾薬(HAWK air defense systems and munitions)

 ホーク(Homing All the Way Killer, HAWK)は、アメリカ合衆国レイセオン社が開発した地対空ミサイル。アメリカ軍での名称はMIM-23。1950年代末に開発され、現在でもNATO各国で運用されている。アメリカ陸軍はホークの配備を推進する一方で、1964年には低空目標への対処能力向上を主眼とした近代化改修として、HAWK/HIP(HAWK Improvement Program)計画を開始した。これはミサイルを更新するとともに、地上側のレーダーや情報処理装置なども更新・強化するものであり、ミサイル本体はI-HAWK(Improved Hawk)、形式名はMIM-23Bとなった。この形式は1971年に承認され、1978年までにアメリカ陸軍・海兵隊の全ての部隊のミサイルがこちらに更新された。(Wikipediaから抜粋 )

ホワイトサンズ・ミサイル実験場博物館に展示されるMIM-23 HAWK:Wikipedia から抜粋

 ③防空用の AIM-7(Sparrow)、RIM-7(Sea Sparrow)、および AIM-9M (短距離空対空ミサイル)の各ミサイル

*スパロー(Sparrow)は、米国レイセオン社製の中射程空対空ミサイル。アメリカ軍における正式名はAIM-7で、誘導にはセミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)方式を採用しており、視程外射程(BVR)が可能である。

アメリカ空軍・海軍、日本の航空自衛隊など、西側諸国の空軍を中心とした軍事組織で広く使用されるが、現在ではAIM-120 AMRAAMや99式空対空誘導弾などといった、アクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)誘導方式が可能な新型の空対空ミサイルへの更新が進んでいる。

AIM-7 スパロー(Wikipedia から抜粋)

RIM-7(Sea Sparrow)は、空対空ミサイルであるスパローを元に開発された個艦防衛用の艦対空ミサイル。順次に改良が重ねられており、最新発展型の発展型シースパロー(ESSM: Evolved Sea Sparrow Missile; RIM-162)では僚艦防空・近接防御が可能なまでになった。またシステムとしても、もっとも初期に配備された応急的なBPDMS(Basic Point Defense Missile System)、改良型のIBPDMS(Improved BPDMS)がある。

旧西側諸国でもっとも一般的な個艦防空ミサイル・システムであり、アメリカ海軍を始め、NATOなど複数の西側諸国で採用され、海上自衛隊韓国海軍でも運用されている。

RIM-7 Sea Sparrow

AIM-9M サイドワインダー (「AIM」は「Air Intercept Missile」の略) は短距離空対空ミサイル。航空迎撃ミサイル (AIM)-9 サイドワインダーは、1950 年代にアメリカ海軍によって開発された超音速短距離空対空ミサイルです。 1956 年に就役し、派生型とアップグレード型は 50 年経った今でも多くの空軍で現役で使用されています。 海軍がカリフォルニア州チャイナレイクでミサイルを開発した後、米空軍はサイドワインダーを購入した。

サイドワインダーは米軍で最も広く使用されているミサイルで、海軍/海兵隊のF/A-18A-D、F/A-18E/F、AV-8B、AH-1、空軍のF-16で採用されている。 F-15F-22A-10 航空機。 さらに、サイドワインダーは 30 名以上の海外顧客によって 12 種類以上の異なる航空機に搭乗されています。(米国海軍サイトから抜粋、仮訳)

④ 2,000 発を超えるスティンガー対空ミサイル(FIM-92 スティンガー(FIM-92 Stinger)は、携帯式防空ミサイルシステムである。アメリカのジェネラル・ダイナミクス社が1972年から開発に着手し1981年に採用された。FIM-92 スティンガー(FIM-92 Stinger)は、携帯式防空ミサイルシステムである。アメリカのジェネラル・ダイナミクス社が1972年から開発に着手し1981年に採用された。

 FIM-92 スティンガーは、FIM-43 レッドアイ 携行地対空ミサイルの後継として1967年に開発が始まったもので、開発においては、どのような状況下でも使用できる全面性と、整備性の向上、敵味方識別装置(IFF)の搭載に主眼が置かれた。

 主目標は、低空を比較的低速で飛行するヘリコプター、対地攻撃機、COIN機などであるが、低空飛行中の戦闘機、輸送機、巡航ミサイルなどにも対応できるよう設計されている。このため、誘導方式には高性能な赤外線・紫外線シーカーが採用され、これによって目標熱源追尾能力(発射後の操作が不要な能力)を得ている。

FIM-92 Stinger (Wikipediaから抜粋 )

AN/TWQ-1 アベンジャー防空システム(AN/TWQ-1 Avenger Air Defense System)は、アメリカ合衆国の近距離防空ミサイル・システム。軽車両からFIM-92 スティンガー地対空ミサイルを発射できるようにしたもので、従来の自走式対空ミサイルより軽便で機動性に優れている。アメリカ陸軍・海兵隊の近距離防空用地対空ミサイルシステムとして開発・配備された。主契約社はボーイング社。

AN/TWQ-1 アベンジャー防空システム(Wikipedia およびUnited States Army Acquisition Support Center (USAASC)から抜粋)

VAMPIRE は対無人航空機システム (c-UAS) :この L3Harris社の スーツケース タイプの APKWS ランチャーおよびデジグネーター キットは、特殊作戦や軽部隊が通常携行する兵器の射程を超えて地上部隊や空軍目標と交戦する能力を地上部隊(SOF)に提供する。 これはモジュール式で持ち運びが可能で、現場に取り付けることができ、オペレーターが隠れたり、移動したり、連続して発砲したりしながら、広範囲の航空範囲と防御を提供する。 先進精密殺害兵器システム (APKWS) やその他のレーザー誘導兵器を発射するための荷台を備えたほとんどの車両に取り付けることができるポータブル キットである。

 ヴァンパイアの特徴として、あらゆるピックアップまたは荷台付き車両に適合するように設計されており、設置は一般的な工具を使用し、2人で約2時間で完了できる。

L3Harris’ Vehicle-Agnostic Modular Palletized ISR Rocket Equipment (VAMPIRE)(同社サイト12/7⑤から抜粋)

⑦ c-UAS(対無人航空機)用ガントラックと弾薬(c-UAS gun trucks and ammunition)。

* c-UASガントラックは,主にM230リンクFed 30 mm兵器システム*と近接弾薬で武装する。C2のネットワークソリューションの一部として、およびM-ACEシステムC2機能を使用して動作できる。M-ACEプラットフォーム(Mobile, Acquisition, Cueing and Effector System)がUASを識別すると、正確なターゲットの位置がガントラックと共有される。一緒に使用されるC-UAS機能は、移動する無人システムを正確に識別、追跡、および倒す。(Ukraine will operate Northrop Grumman M-ACE C-UASから抜粋、補足のうえ仮訳)

c-UAS gun trucks

*M230 砲は 30 mm (30×113 mm) の単銃身電動機関砲で、発砲と発砲の間に武器に動力を供給するために (カートリッジの発射によって生成される反動や膨張ガスではなく) 外部電力を使用する。(M230チェーンガン M230 Chain Gunから抜粋)

⑧ 移動式c-UASレーザー誘導ロケットシステム。

航空機に搭載される無誘導ロケット弾に、セミ・アクティブ・レーザー誘導装置を追加した精密誘導兵器。

 例として、APKWSは、米攻撃ヘリコプター・無人攻撃機の主な武装である、ヘルファイア・ミサイルと全長はほぼ同じだが、重量は約3分の1と軽量で、高い命中精度を有し、周辺部への被害も限定できる。APKWSとは昔から戦闘機等が多連装ロケット弾ポットに搭載していた70mmロケット弾に簡易なSAL誘導装置を取り付けた安価なシステムである。

APKWS IIは、無誘導のHydra 2.75インチロケットとレーザー誘導キットの設計変換であり、精密殺傷機能を提供する。 これは、接近戦での付随的な被害を制限しながら、ターゲットを破壊する安価な方法として意図されている。 APKWS IIガイダンスセクションは、レガシー10ポンド高爆発性弾頭とMk66 Mod 4ロケットモーターの間にある。 生産は2011年に始まった。 初期運用能力(Initial Operational Capability :IOC)は、AH-1WおよびUH-1Yヘリコプターで2012年に宣言された。2014年3月、APKWS IIはMH-60SおよびMH-60Rへの統合に成功した。 2016年、APKWS IIはAV-8B、F-16、およびA-10航空機に配備された。(DOD 海軍サイト解説を抜粋、仮訳)

DOD 海軍サイトから抜粋

米バイデン政権が2023年8月に発表したウクライナ支援にVAMPIRE C-UAVシステムが含まれていたが、VAMPIREはピックアップトラックにAPKWSなど4発とEO/IRトラッカーを装備を搭載したシステムと言われていた。(解説解説から抜粋)

⑨その他の c-UAS 機器。

⑩対空砲と弾薬。

⑪西側の発射装置、ミサイル、レーダーをウクライナのシステムと統合するための機器。

ウクライナの既存の防空能力を支援し、維持するための装備。

⑬ 重要な国家インフラを保護するための設備。

⑮ 21 基の航空監視レーダー。

⑯ 39 高機動砲兵

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